政治にはもともと興味がありました。学生時代には議員インターンで私設秘書の仕事や、民間上場企業の経営者として国会の若手議員の支援などを経験しました。そういった経緯で政策の勉強や議員の応援などをしてきました。
直接的なきっかけとしては、浅尾慶一郎政策調査会長の支援やみんなの党のアジェンダ作成(成長戦略や産業政策部門)のお手伝いなどを経て、2010年の7月の参議院選挙の1ヶ月ほど前に、いわばハプニング出馬のような形で立候補をしました。5月の連休前の時点では、まさか自分が国政選挙に出馬するとは思っていませんでした。
起業・経営の経験を通して生まれた問題意識は二点あります。
ひとつは、国の規制強化によって経済発展が妨げられることです。例えば、個人情報保護法によってマーケティングの自由が大きく妨げられたことや、労働契約法制の強化による影響など、もちろん悪気があるわけではないのはわかりますが、経営者側からして見ると「放っておいてくれればいいのに」と思うような規制強化が多々ありました。
もうひとつは、国外事業に対する邦人保護の弱さです。政府の度を超える強い関与は逆に足かせになってしまいますが、あまりルールを守らない新興国などへ進出するビジネスにおいては、国レベルの交渉事も多く、政府のサポートは重要です。オランダやアメリカの企業で務めた経験を通じて感じたことですが、海外、特にアメリカでは、国外事業に対して政府がしっかりとしたサポート体制を与えてくれます。一方日本では例えばODA(政府開発援助)がほとんど日本企業に還元されないなど、特に海外でのビジネスに対する国のサポート体制が弱いと思います。
創業社長として、東証マザーズ上場させた経営者として、こうした問題意識を持ちつつ、政治に働きかけることはしていました。そんな中、政権交代が起こり、民主党政権に変わったのですが、民主党は国家資本主義のような、国家が大きな力をもって経営をしていくような性質でしたので、ますますやりにくさを感じていました。
実際に国会議員の一員となって感じたことは、まず国会が「ダサい」。そして「雑・無責任」だということです。民間では考えられないようなことに日々驚かされました。
国会議員はもっと質の高い仕事をするべきなのではないかと思います。実は国会議員は思っていた以上に大きな権限を持っています。例えば「国政調査権」。政府には説明責任があるので、これを使うことで国会議員は委員会や本会議における質疑、質問主意書提出等の形で、総理であろうと大臣であろうと直接質問をすることができます。どんな民間人でも、国会議員となれば、たったひとりでも国権のトップに質問をすることができるのです。
また、これもあまり知られていないことかもしれませんが、国会図書館は政策作成のサポートをしてくれる場所です。書籍の貸し出しというのは実は二義的なもので、本来の目的は立法のサポートにあります。多くの調査員がいて、事務所よりの調査依頼・要望に対して、即座に対応をしてくれます。例えば、海外の事例など大きなものを調べる際には非常に役に立つ機関なのです。
こうした沢山の強力なサポートを活用していない国会議員が多いのではないかと思います。これらを利用すればもっと質の高い仕事をできるのではないでしょうか。
そして国会が「雑・無責任」ということに関してですが、民間の常識からすると考えられないようなことが多々あります。普通の企業であったら犯罪、背任であるとされるようなことが日常茶飯事のように見過ごされているいるのです。
例えば、今回の平成24年度補正予算案について、産官学の研究機関をつくるのに1800億円、紙一枚で細目無し。あるいは代々木競技場の電光掲示板の取り替えに16億円。競技場の掲示板を取り替えたら経済がよくなるのでしょうか?提出された予算書を、国会内の会議でもあまり議論しません。特に問題視されなけることがなければ、そのまま通過してしまう。チェック機能はどこにあるのでしょう?こうした雑な仕事が本当に多い。民間企業の感覚からすれば100万円単位でも何時間もかけて何枚も書類を用意してお客様に提示するのも当たり前なのですが、政府、国会はこの感覚がありません。
民間はコストパフォーマンス、割り算の世界なので私も数字にこだわるのですが、その考え方が欠如しているのではないかと感じます。また例を出せば農林水産関係の有害野生鳥獣捕獲対策で、30万頭を捕まえるのに国から一頭あたり98,000円出すという話がありました。ところが猟友会に一頭あたり駆除にどれくらいの金額がかかるのかを聞いたところ、一頭8,000円で済むそうです。民間の経営者は、総額ではわかりにくいものも割り算をして単位当たりの金額を見てみるとおかしいことに気づくはずです。国会では、もっと精密で丁寧な仕事がなされるべきではないでしょうか。
民間で働いてきた視点、みんなの党のTPPに関しての担当者としての視点、反対派の農林水産関係からの視点、様々なポジションにいるので切り口がそれぞれ異なってきますが、私が海外進出を経験した来た身として言えるのは、TPPは、実は将来「中国」を参加させることが大きなポイントとなります。
中国とは関わりが深いので悪口は言いたくないのですが、「ならずもの」なんて言われてしまうように、国内経済において国際的ルールを守らないことも多く、ビジネスがしにくい国です。しかし市場としては本当に魅力的な国なのです。それをなんとかして世界の経済に引き込むには何らかの国際的枠組みが必要となってきます。TPPで将来中国をどのように取り込むのか、そこが大きな問題になります。
ではどの枠組みで中国を取り組むのか。選択肢として上がるのが、ASEAN+3あるいはTPPです。しかしASEAN+3を選択した場合、「中国が作り上げた秩序である枠組み」に、日本が飛び込んでいくことになってしまいます。中国主体の秩序の枠組みに入っていくのか、それとも日本と米国を中心とする環太平洋主体の枠組みに中国を取り込むのか。また、中国の貿易のお得意先はやはりアメリカです。その他にも主な貿易相手国が参加している環太平洋(TPP)の枠組みに入らなければ中国も厳しい状況になると思います。世界経済の大きなアクターとなる中国といかに関わるかを考えると、やはりTPPを推進すべきだと思います。