Logo

【川田龍平議員】薬害を引き起こす政治の構造と課題

政治に携わろうと考えたきっかけを教えてください。

 私が政治に興味を持ったきっかけは、自分が薬害の被害者になってしまったことでした。血友病という病気の治療で国が安全だと認めた血液製剤を使ったところHIVウイルスに感染してしまったのです。高校生のとき、国と製薬会社を相手に裁判を起こしました。「二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、国に謝罪してほしい、責任をとってほしい、そして国を変えたい」と思って裁判を闘ってきました。

 当時、サリドマイドや公害問題などにおける経緯から、国相手の裁判には勝てないと言われていました。なんとしても国相手の裁判で勝ちたいと思って、19歳のときに実名公表しました。最終的には、和解となりましたが、裁判が終わっても国は変わりませんでした。

 繰り替えし薬害を引き起こす社会の構造を変えたい、子供たちに同じ苦しみを味あわせたくない、その思いが政治家を志すきっかけになりました。

 

薬害裁判を闘って、どのような政治課題を感じていましたか?

 薬害を引き起こす「社会の構造」がありました。厚生省の役人が製薬会社へ天下るとか、天下り先の製薬会社、多額の政治献金を受け取るいわゆる族議員がいて、厚生省と仕事をしていく。国の研究会や審議会の委員である学者・医者と政官業が結びついて、多額の研究費をもらっている。そうした癒着を繰り返す社会の仕組みがありました。

 法律を変えることと、情報公開を積極的にするしかありません。天下り・研究費などを国民がチェックできるような制度・仕組みを作っていくことが必要だと思います。

 

議員となってからのお仕事を教えてください。

 新薬や医療機器の治験・臨床試験の被験者が、きちんと守られるような法整備をしようと、勉強会や議論を重ねてきました。薬害の問題を考えていく中で、「医療全体も制度的な問題などを抱えている」ということに気づきました。

 2010年7月に厚生労働委員会の委員となり、薬害の防止はもちろん、医療全般を変えていこうと、国民皆保険制度など、様々な問題に取り組んできました。

 また、東日本大震災と原発事故被災者のために、「子ども・被災者支援法」の議員立法に携わりました。これは、被災者の方が裁判をしなくても、無料の健康診断や医療費減免などの救済を受けられるようにする法律です。

 これまでの薬害や公害では、健康被害と事故の因果関係を裁判で証明しなければ、補償を受けられないことが多々ありました。この法律は、裁判をせずに救済を受けられるようにする、というところがポイントです。

 私は震災がおこる前から、環境委員会などで原発と地震の問題を何度も訴えてきましたが、残念ながらそれが現実になってしまいました。いまなお放射性物質の拡散は深刻な問題ですが、震災発生時の被災者補償に関する政府の対応は遅かったです。そこで、超党派の議員連盟を立ち上げて、震災と原発事故の被災者を救済する、特に子どもや妊婦さんといった将来世代を守るための法案作りを進めました。

 法案は2012年6月21日に衆議院本会議で、全会一致で可決され、成立しました。現在は、政府、官僚による法律の具体的な中身を作る作業が行われています。私は、法案の理念が生きるように、作業のチェックや政府への働きかけを行っています。

 

今までの活動を通して感じられた、日本政治の本質的な課題を教えてください。

 政治についての大切な情報や知識を、国民が知る機会が少ないことが問題だと思います。

 いまのTVや新聞では、ほとんど政治のことが伝わってこないですね。

 政治の重要な決定が、逮捕といった警察関係のニュースでかき消されてしまうことは、よくあります。たとえば2012年6月21日には、被災者にとって大変重要な「こども・被災者支援法」の衆議院本会議での可決が、同じく衆議院本会議での消費税の増税法案成立やオウムの高橋被告の逮捕のニュースでかき消されてしまっている。こういった警察の動きには、たいがい政治的な裏があると考えた方がいいです。

 メディアは党の離散集合やスキャンダルなどは良く取り上げていますが、真面目に頑張っている議員のことを取り上げることは、あまりありません。ニュースにはならなくても、一生懸命頑張っている議員の方は沢山います。

 政治を国民に伝えるメディアがないことに加えて、政治に関する教育の機会も今の日本には、ほとんどないですね。

 国民の知る機会・メディアの不足は、特に若年層の政治的な無関心を生んでいると思います。若年層の政治への関心の低さは投票率低下を招きます。相対的に投票率が上がった高齢者向けの政治が勢いを増し、どんどん若者が政治に興味を持つ機会が減っていきます。 

 国民が無関心であればあるほど、為政者は好きなことがやりやすいです。最近の投票率は60%程度と低いですが、加えて死に票が多い。たとえば前回の衆議院議員選挙では、有権者の60%中の3割の投票しか獲得していない自民党が政権を取り、政治を動かすようになっています。投票に行っていない4割の人が投票すれば、選挙結果は大きく変わるのです。

 自民党に政権交代しましたが、いまの国会を見ていると、官僚の影響力が強い過去の政治に戻ってしまったように感じます。大臣の答弁も、官僚答弁が多いです。

 官僚、霞ヶ関の考える政策は、えてして箱ものになりがちです。例えば、被災地への支援を考えるときに、公共事業で施設を作りたがる、しかし実際には施設が揃っていて、必要なのはそれを生かすためのソフト面の支援である、といった現場と霞ヶ関のズレがおきることが、よくあります。

 そうした官僚主導が出てくるのは、「スキルがあって、何をやればどう政治が動くかわかっている政治家」が力を発揮できていないからだ、と感じています。政治の世界は、揚げ足取りが多いです。政治家がしっかりした方針をもち、表面的なことに終始しないで今必要なことを提言できるジャーナリズムや、政治を良く知りチェックできる国民の目が必要だと考えます。

 

これから先、川田龍平議員が成し遂げたい目標は?

 私は、「いのちがすべての基本」であると心から信じています。国民のいのちを守ることが政府・国の責任です。いのちが最優先される社会を作るためにどうしたらよいかという視点で、あらゆる問題を考えていきたいです。

 まずは「子ども・被災者支援法」を機能させることです。今なお原発事故は終わっていません。非常事態宣言は解除されていませんし、食品・がれきなどで放射性物質の拡散が進んでいます。被災者の方を守るために作ったこの法律の具体的な中身を形にしていきます。

 また、薬害をなくすために、役所・官僚などを監視する制度、構造をつくりたいです。政府の審議会でも、最近やっと薬害再発防止のための第三者機関を、厚生労働省と別につくるという話も出てきています。

 子ども・被災者支援、薬害再発防止の制度実現の両方について、超党派の議連を立ち上げました。みんなの党は、キャスティングボートを握っているので、その立場を上手に使って法整備を進めていきたいと思います。

 

有権者へのメッセージを、お願いします。

 昨今、若者の閉塞感が問題となっています。私は、若い人が希望を持てるような教育、社会作りは大人の責務だと思っています。子どもに対して、身の回りの大人が与える影響は大きいです。身近な大人が、真面目に、希望をもって生きているか、という点が大切だと思います。こども、若者の問題は、先生や学校のせいだけではありません。

 また、特に若い人には、ぜひ読書をしていただきたいと思います。本は、出版までに何人もの目を経て事実確認、校正が行われています。本を読んでいくと、ニュースよりも事実に近いことが分かってきます。テレビ、新聞、ネットなどにありがちな、表面的な情報に流されない、情報を取捨選択する力や正しい知識を、読書で培っていただきたいです。

 「政治は分からないから、”良くできる人に任せればいいや”」ということでは、政治は良くなっていきません。メディアもお金のあるところと結びついています。今の政治はお金のある人による、お金のある人のための政治になっています。

 希望がないからといって単に暗くなるのではなく、どうしたら社会が良くなるか、ぜひ自分たちの問題として捉えて考えていただきたいと思います。

 

新着記事