国債残高等を合計した国の借金は国、2012年末にすでに997兆円となっている。IMFは、日本の政府総債務残高が近く対GDP比で245%になると見込んでおり、中期的な公的債務の引き下げが「緊急課題」だと警告している。1 しかし、2013年度の一般会計予算では、国債費は過去最高額であり、社会保障費は30兆円に近い規模になっている。この状況を改善しなければ、将来世代に膨大な借金を残すことになってしまう。
「若者の声」が政治に反映されにくいことも、世代間格差を拡大させる原因である。2009年の衆議院選挙における投票者数を見ると、20~30代が投票者全体の24.1%を占めるのに対して、60代以上は41.3%である。2 また、衆議院議員の側も、50代以上の議員が全体の6割近くを占めており、20代の議員はわずか2%である。3 こうした状況から「シルバー民主主義(シルバーデモクラシー)」と呼ばれる、高齢者の意見が過剰に政治に反映されやすい状態になっているのではないかと懸念される。
現行の社会保障制度では、高齢世代と現役世代・将来世代の世代間格差が問題である上に、少子高齢化の進行によって制度自体を維持することが困難になっている。社会保障財源を借金として将来世代に負担させるのではなく、世代間の負担を公平にする仕組み作りと規模の縮小によって、持続可能な社会保障制度を実現できる。
高齢化社会では、充実した社会保障制度が人々の生活を守るという前提のもと、大企業・高額所得者に対して所得税・法人税・資産課税などの課税を強化することで、現行の社会保障制度の維持・拡充を実現する可能性がある。
世代間格差とは、主に社会保障の給付や保険料の負担において高齢世代と現役世代、そして将来世代の間に生じる格差を指す。日本の社会保障制度は、高齢世代の受ける福祉サービスや年金の負担を現役世代が担うことで成立してきた。この制度は「多数の現役世代が少数の高齢世代を支えること」を前提としており、実際に、1948年には12.5人の現役世代が1人の高齢者を支える社会であった。しかし、急速な少子高齢化の影響により、2010年には2.8人の現役世代が1人の高齢者を支える状況になり、さらに2050年頃には1人の現役世代が1人の高齢者を支えるよう状況になると推測されている。4 社会保障制度は、「多数の現役世代と少数の高齢世代」という前提が崩れたことで、不足分の財源を公債金に頼る状況が続いている。しかし、将来世代の負担となる債務残高はすでに対GDP比230%であり、先進国最悪の水準となっている。そのため、2012年から社会保障と税の一体改革と呼ばれる、「社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す改革」5が始まった。
日本の財政は1990年代から急速に悪化してきたが、これまで政府は財政再建に必要な負担を将来世代に先延ばしにしてきた。そして、デフレの長期化により名目GDP・税収が押し下げられたこと、経済の成熟化により景気対策を実施しても持続的な景気回復・税収増が困難であること、急速に少子高齢化が進行したことにより、日本の財政は深刻な状況にある。6 さらに一般会計における歳出の約30%を占める社会保障費は、高齢化の進行によって毎年1兆円規模で増加すると言われており、このままでは現役世代と将来世代の負担は重くなる一方である。そのため、世代間格差の是正と持続可能な社会保障を実現するための財政改革が求められている。
世代間格差を示すデータとして、「世代会計」と呼ばれる手法を用いて生涯所得に対する純負担の割合を試算すると、高齢世代(1300万円の利益)、現役世代(20代:4100万円の負担)、将来世代(6200万円の負担)というように大きな差がある。7
しかし、一方で、相対的貧困率は高齢世代の方が最も高いことを示すデータもある。従って、世代間格差の問題を考える上では、高齢世代全体に負担を強いるということではなく、高齢者の「世代内格差」にも配慮することが必要である。
維新の会、みんなの党、自民党は財政健全化(プライマリーバランスの黒字化)を目標に、持続可能な社会保障制度の構築、消費税等の増税を主張する。維新の会は、企業減税等のフローに対する課税の引き下げを掲げる。みんなの党は、社会保障と税を一元管理する歳入庁の設置を主張している。自民党は2020年までのプライマリーバランス黒字化を掲げている。
中間派に位置する政党は、財政再建を目指しながら、同時に社会保障の充実も重視している。民主党は、自民党と同様に2020年までのプライマリーバランス黒字化を目標としている。公明党は自民党の財政再建の方針を基本的に支持している。生活の党は財政再建に関する具体的な方針がマニフェストでは示されていない。
共産党、社民党は社会保障の拡充と、そのための財源を富裕層と大企業への増税、累進課税の強化で創出することを主張している。また、消費税の逆進性を主張して、消費税引き上げに反対している。