自民党政権下で長らく多大な支出が行われて、90年代を通して支出は上昇を続けてきたが、小泉政権下では構造改革の一環として縮小に当初から取り組み[1]、任期中に30%以上の減額に成功した。この流れはその後三代の首相、民主党政権にも基本的に引き継がれ、民主党政権では「コンクリートから人へ」の指針のもと、減少が続き、結果として10年間で11.3兆円から6.2兆円へと大きく減少した。
一方、安倍政権では国土強靭化の方針のもと、公共政策を重視する傾向を顕著に復活させ、24年度は安倍政権が作成した補正予算が24年度の本予算の4.6兆円を上回った。
現在、公共事業が再度重視される背景としては、東日本大震災を受けての防災意識の高まり、津波予想の改定などに伴い、津波対策、耐震工事などの必要性が増したことが挙げられる。また、高度経済成長期に作られた道路などの設備が40年ほど経過し補修が必要な時期を迎えており、2012年12月の笹子トンネル天井板崩落事故を機にその緊急性が繰り返し指摘され[2]、首都高などの補修の議論も活発化している。
公共事業投資が盛んだった高度経済成長期にはインフラ整備の必要性は高く、その経済効果も大きかったとされるが、近年は2012年6月の整備新幹線認可に対する批判や八ッ場ダム建設の中止と再開を巡る騒動など、大型公共事業に対して厳しい視線が向けられ[3]、また公共事業のもたらす経済効果は近年小さくなっているという指摘もなされている[4]。
公共事業とは、インフラストラクチャーの整備の意味で用いられ、地域の交通、治水、防災などの機能を高める効果と、地域経済にお金を流すことでの経済活性化の両効果があるとされる。
自民党55年体制下では急速に発展する経済に合わせてインフラを整備する必要性から大規模な公共事業が数多く行われ、国の発展に大きく貢献すると同時に、利益誘導型政治の典型ともされてきた。90年代には公共事業は不景気の中で景気対策として繰り返し利用されてきた。このような公共事業重視の時代が続いた結果、日本の公共事業投資額のGDP比は他の先進国と比べて際立って高くなっている。
このような流れに対して2000年代に入ってからは公共事業が無駄の象徴として扱われることが増えてきた。小泉政権では道路特定財源など聖域とされた領域に切り込み、公共事業の硬直性を打破し、効率性、透明性を追求した。民主党政権になってからも「コンクリートから人へ」を合言葉に公共事業を削り社会保障等をより重視する姿勢を打ち出し、自民党政権下の2009年度予算から本予算の規模では7.1兆円から2012年度の4.6兆円まで大きく減額することに成功した。一方で八ッ場ダムの事業再開や整備新幹線への認可などこの方針を貫徹できているのかには疑問もある。
安倍政権になって国土強靭化政策を打ち出し、国土強靭化総合調査会の提言によれば10年間で200兆円とも呼ばれる規模の大規模投資を目指している[5]。野党各党とも災害対策、老朽化対策から必要だという主張などでは共通する点も多いものの、無駄な公共事業のチェック体制の必要性などを訴え、自公政権の公共依存重視の姿勢を「古い自民党の復活」、「バラマキ」などと批判している[6]。また自民党内でも一部財源の特定財源化を党税制調査会が決定し、首相が覆すなど抗争が活発化している。
自民党は国土強靭化を掲げ、特に今後3年間を重点期間として「災害に強く国民にやさしいまちづくり」「国民に約束した国の基幹ネットワークを含む道路網の整備」「重要インフラの防御」などを掲げ、地域経済の中長期的な発展の呼び水、雇用創出なども目指すとする。
公明党も「10年間で10兆円の防災・減災ニューディール」を掲げ、公共事業の拡大を志向する。
維新の会は「無駄な公共事業の復活の阻止」を掲げる一方で「競争力強化のためのインフラ整備」も掲げており、中間的と言える。
みんなの党は「脱"バラマキ"による公共事業で地域のインフラを整備」を掲げ、無駄削減を唱えつつ、成長戦略の一環として位置づける。
社民党は体制のチェック、持続可能な次世代投資への転換を謳い、抑制的な方向性を基調としつつ、一定の必要性も明示している。
民主党は自民党を「借金で公共事業を垂れ流し続けた20年間」と批判し、マニフェストの中でも唯一の言及箇所が防災力強化の項目の中で「ハードの整備に偏りすぎることなく」と記すなど、公共事業抑制の方向性を強く打ち出している。