2011年3月11日に起こったマグニチュード9.0の東日本大震災は、人の被害のみならず、地域社会と地域経済に大きな打撃を与えた。具体的には、地震や津波による鉄道や道路等の産業インフラの打撃、海洋汚染や土壌汚染、風評被害等が挙げられる[1]。特に、岩手、宮城、福島の東北3県の被害は甚大とされる。食料や電力の中心である東北の復興は日本の復興にもつながるということから、産業復興は不可欠だ。もちろん、内陸を中心に操業を再開する企業は同年3月末に30%だったものの6月末には85%になった[2]等明るいニュースもあるが、東北全体で離職者が13万人出たという現実もあり対応が必要である。
水産業に関わる第一次産業関係の従業者は沿岸部分の全従業者数の半数以上に及んでおり、東北の中核を担っていた。このような東北の強みである産業に加え、自動車産業や観光サービス等を中心にした復興案が経済産業省によって提唱されている[3]。
今回の震災において「二重ローン」で苦しむ人が続出している。「二重ローン」とは、日本弁護士連合会によると被害を受けた住宅ローンが残っているため、新たにローンを組むことが出来ずその後の資金調達ができない状態になっていることを指す[4]。具体的には、新しい住宅ローンなどが組めず仮設住宅から出た後の生活が著しく困難になるなどの被害があり、震災前のローンの返済停止等を行うことができる「被災ローン減免制度」等により対応しようとしている。
具体的に産業復興といってもどのようなアプローチが可能なのだろうか。まず、インフラを整備する形の復興が可能である。ガレキなどを取り除き、道路や電気、水道といった生活に不可欠なインフラを整えることは、人の生活に不可欠であるばかりか、地元に企業が根付くための必要条件でもある。次に、企業のインセンティブを利用したアプローチが可能である。これは、法人税の面での優遇等、企業に有利な条件をつけ被災地で事業を展開するインセンティブをつくることや、新規事業の投資・開拓等で可能である。これによって、地元産業の企業・復興や、地元の消費の活性化にもつながることが期待されている。他にも、やや間接的ではあるかもしれないが被災者を直接経済的に援助したり、「二重ローン」のしがらみから開放させることで個人の消費活動等を活性化し経済活動を促進することもできるだろう。
では、過去の例と比べるとどうだろうか。傾向として、産業構造と地震前の人口の状況が、復興の成功と因果関係がある可能性が指摘されている。[5]今回と同様、大規模の地震である阪神淡路大震災においては第三次産業に従事する人が多く、また人口も多かったためインフラの整備が進むにつれ戻ってくる被災者が多かった。一方、北海道南沖島地震が起きる前の奥尻市では漁業・建設業といった第一次産業が占める割合が高く、人口減少が進んでいおり地震後も過疎化は進行した。では、今回の東日本大震災ではどうだったのだろうか。残念ながら、宮崎県石巻市や岩手県陸前高田市においても、第一次産業が占める割合が高く人口も1980年代以降減少傾向にある。[6]したがって、単純なインフラ整備だけではなく、根本的にメスを入れることが不可欠であることが導かれる。おそらく、こういった事情から経産省の「脱第一次産業依存」的なアプローチが生まれたのだろう。
公明党や社民党は、ガレキ処理や高台移転を進めるとともに、農林水産業等を本格的に復興させ雇用の創出を目指している。みんなの党は、復興庁を被災地に設定し現場重視を押し出すという違いはあるものの、被爆の被害の徹底的除去に加え、被災地の法人税ゼロ化、農林漁業の規制緩和、新エネルギーの優遇措置等を行うとマニフェストに明記している。
共産党と新党改革は住宅、商店、向上、医療機関の支援を行い、どちらかというと二重ローン等に苦しむ個人に焦点を置いている。
まず、国によるインフラ整備を中心に据えるスタンスを自民党、民主党等がとっている。自民党は、復興庁の本格稼働と復興交付金の確保、ガレキ処理の加速化、災害対応の漁港・水産関連施設の整備等を国が主導するとしている。民主党も同じようなスタンスで、三陸沿岸道等の国直轄の復興道路の整備を加速し、7年以内の全線開通を目指すとマニフェストに明記している。生活の党も同様のスタンスである。