2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震及び津波の影響で、水素爆発が生じた。具体的には、原子力発電所の発電時・発電後に燃料及び使用済み燃料を冷却する装置の機能が失われ、水素が異常に発生し水素爆発が起こった。これにより、建物の破損及び放射線物質が大気中に放出された[1]。
国際原子力事象評価尺度(International Nuclear Event Scale)[2]に基づいた福島原発事故の危険レベルはチェルノブイリのそれと同じく、7とされた[3]。具体的には、事故により大気中にばらまかれたヨウ素131、セシウム134、セシウム137等の放射性物質の影響は、東北地方から関東地方を中心に、食品や水道水等に及んだ。同発電所から半径20km以内は立ち入り禁止空気とされたばかりか、福島県の一部の自治体では乳児の水道水引用を禁止した。[4]一方で、身体への被害は福島の方が少ない可能性も指摘されている。[5]
チェルノブイリ以上に環境を汚染しているという指摘もある[6]汚染水の被害によって魚などの水産資源への影響があり隣国である韓国が提訴する構えを見せたことは記憶に新しいが、土壌汚染は1400万ベクトルにものぼる被害を観測している。こういった汚染の状況の情報公開が遅れたことに関して政府に対する批判が集まっている。
事故の原因に関しては、2013年4月5日の阿部総理大臣の「国会の原発事故調査委員会や、政府の事故調査・検証委員会などがあったが、まだ検討が必要な項目もある。」という発言をみても明らかなように、事故の詳しい原因究明はまだ終わっていない。[7]具体的には、地震による水素爆発なのか、津波によるものなのか、安全対策は十分だったのか等で政府・国会・民間・東京電力間で意見が対立している。しかし、東京電力自身も「津波想定に甘さがあり、津波に対抗する備えが不十分であったことが事故の根本的原因」と一定の責任を認めている。[8]
福島原発事故によって多くの被害が起こったことは言うまでもない。前述した汚染や健康被害に加え、海外移転を検討する企業の増加や観光客の減少に伴う経済的被害、農作物や住民への風評被害等は記憶に新しい。
だが、前述したように何が直接的な事故の原因だったのかというレベルでも、どのような影響/被害があるのかというレベルにおいても議論は今日も続いている。一見議論が進んでいないようにも思えるが、そもそも、科学はデータの取り方に関しても複数の方法があり、またデータの解釈の仕方に関しても争いが多いにありうる。似たような構造は、遺伝子組み換え食品のように「不確実性」を伴うものでは常に起こりうる。そして特に原発事故に関しては、健康被害等に関して大きく争いが起こっている。その理由として、データの少なさや健康被害がどの程度被爆によってもたらされるか測定することの困難さなどが挙げられる。こういった科学や原発事故の特性が極端な議論も生んでいる理由である[9]。
しかし、科学的・技術的理由以外で被害が拡大した理由として、政府と東京電力の間で情報共有が上手くいかかったことや、放射線の計測値公表の遅れ等が指摘されている。また、そもそも原子力発電の推進と安全規制が同じ期間に共存しており安全規制が機能していたか疑問視する声もある。
今後の対策としてはどのようなものがあるのだろうか。まず、現在の行政法では十分に救済ができないため、特別法の立法により同事故の被爆者に金銭的支援を行なう動きがある。また、指揮統制の統一や責任の所在の明確化のために原子力発電所産業を国有化するべきという案もある。さらに、今後の原子力発電の安全性向上のために、原子力発電所の安全水準を常に最新の基準にすることを義務づけるバックフィット制の導入等も議論されている。[10]いずれにしろ、今後の動向が注目される。
自民党は、国主導により第一原発を廃炉にし、また原発の影響を受けた住民に健康診断や心のケアなどを施すことをマニフェストに明記している。公明党も類似したスタンスで、雇用の創出や汚染の除去等を謳っている。民主党も、除染の徹底や速やかな賠償を目指している。
他の党も基本的に一緒だが、維新の会やみんなの党は、食品の全品検査や除染を徹底することと健康被害の未然防止を行うことをやや重く主張している。
また、社民党等は予防原則の徹底や、立法による賠償を目指している。特に日本共産党はすべての被災者・被害者への賠償や支援を行なうとしている。