2011年3月11日、マグニチュード9、震度7の地震が東北を襲った。これに伴い、建物やインフラの破壊、液状化現象、津波などの被害が生じた。また、福島第一原子力発電所で水素爆発が生じチェルノブイリと同じ危険レベルの健康・環境被害が生じた。これに伴う風評被害も深刻で、いじめなどの差別も生じた。さらに、東北全体では13万人もの離職者が出たというデータもあり、早期の対応が求められている。[1]現在でも、避難者はおよそ10万人いるとされている。[2]
幸運にも仮設住宅に入れたとしても被災者支援は終わってはいない。当初は物資・食料が不足していた、プライバシーの保護が無いなどの問題があった。今でも、全ての避難所で近隣住民との間のプライバシーが完全には無く、また入浴施設もない場合もある。[3]他にも、仮設住宅においてほとんどコミュニケーションをとることがなく、人と人との繋がりが希薄化し、心理的な負担があることも指摘されている。さらに、仮設住宅を出た後のあてがないことも問題になっている。このような問題に関しては長期的なアプローチが必要であることは、阪神淡路大震災時の住宅支援が未だに続いていることからも明らかだ。
支援と行ってもどのようなアプローチが可能なのだろうか。まず、オーストラリアが過去にとった雇用促進政策などが検討できる。他にも「二重ローン」(震災前のローンのせいで、震災後のローンに支障をきたすこと)の解決も必要だ(震災復興を参照)。また、被災者に直接的に給付する金銭的援助も考えられる。他にも、被災者に対する心のケアを施す必要性があることは、多くのNPOから指摘されている。[4]例えば、ボランティアによってなされた「足湯」は身体的・精神的な効果があると言われている。
最初に被災者の定義の問題と二重の弱者の問題について触れたい。被災者というと大きくくくる傾向があるが、「被災者」の支援といっても被災者の定義とは何かで議論になる[5]。先日も水俣病の患者の範囲が拡大したように、国による被災者の認定は常に議論を起こす。すなわち、どこで線をひくのか、またその線に対応してどのような額を提供するのかという議論がある。範囲を拡大しようとすればするほど多くの人は救済されるが、悪用の危険性や、また一人ひとりに対する支援額が減ってしまう懸念があり、被災者の定義には慎重になる必要がある。特に、国民の税金を利用している以上、支援が最も必要な被災者に支援がわたるようにしなくてはならない。
そして、人に関して議論する以上、「二重の弱者」という視点も重要である。すなわち、被災者と言う時点でいわゆる「社会的弱者」というカテゴリーに入るが、被災者といっても一枚岩ではなく、被災前からの弱者は震災によってより深刻な被害を受けていることを留意しなくてはならないのだ。「二重ローン」に苦しむ貧困層は大きく報道でも取り上げられたが、住民の大きな割合を占めた高齢者、援助が遅れた障がい者、性的暴力・セクハラを受けた女性、精神的傷を深く負い学校に行くことができない子供たちなどの「二重の弱者」が指摘されている[6]。なお、このような各個人にあわせた支援を行うために国民共通番号制の導入が検討されているが、プライバシーの権利との兼ね合いも重要で解決策が議論されている。
そして、「被災者支援」と一言で行ってもその態様は多岐にわたる。がれき処理を行いまた住める環境を整えていく、インフラ整備を行い交通の便をよくしたり物資が届きやすくする、企業等を優遇したりすることで経済活動を活性化することなど様々なアプローチが各政党によって検討されている。どのような支援形態が最も適しているのか議論する必要もある。
最後に、留意すべきなのは被災者支援は長期的なアプローチが必要だと言うことだ。前述したようなインフラ整備にしろ、住宅支援にしろ、企業の活動にしろ、時間を要する。一方、残念ながら当事者ではない一般市民はこうした被害を忘れていく傾向にある。もしくは、こういった悲劇を「消費」し、政治的意思に結び付けない場合もある。したがって、今後の動向にも注目し続ける必要があるだろう。
産業復興と同様、直接的に被災者を支援するか、企業活動によって支援するかで分けた。
公明党や社民党は、ガレキ処理や高台移転を進めるとともに、農林水産業等を本格的に復興させ雇用の創出を目指している。みんなの党は、復興庁を被災地に設定し現場重視を押し出すという違いはあるものの、被爆の被害の徹底的除去に加え、被災地の法人税ゼロ化、農林漁業の規制緩和、新エネルギーの優遇措置等を行うとマニフェストに明記している。
共産党と新党改革は住宅、商店、向上、医療機関の支援を行い、どちらかというと二重ローン等に苦しむ個人に焦点を置いている。
まず、国によるインフラ整備を中心に据えるスタンスを自民党、民主党等がとっている。自民党は、復興庁の本格稼働と復興交付金の確保、ガレキ処理の加速化、災害対応の漁港・水産関連施設の整備等を国が主導するとしている。民主党も同じようなスタンスで、三陸沿岸道等の国直轄の復興道路の整備を加速し、7年以内の全線開通を目指すとマニフェストに明記している。