昨年、野田政権下で行った試算によると、年収500万円の4人世帯で年間11.5万円、社会保険料などを含めると年間33.8万円の負担増になるとされる。さらに、年収1500万円の世帯では年収に対する消費税負担額の割合は2.2%だが、250万円の世帯では4.2%を占めるとされ、低所得者ほど負担感が重くなる[2]。逆進性への対策としては軽減税率の導入を中心に検討されているが、税収の減少や高所得者へも還元されることなどから反対もある[3]。
消費税の増税による税収の増加は1%につき2.5兆円程度とされる[4]。しかし財政健全化を目指すのであればこれだけでは到底足りず、様々な努力が必要である。そのため、消費税を再増税の必要性の主張は国会議員の中でも存在する[5]。また、消費税増税によって景気が冷え込めば税収増はあまり進まないという指摘もある。
消費税によって追加で得た税収は「約1%分(2.7 兆円程度) は子ども・子育て支援の充実や医療・介護の充実など社会保障の更なる充実に、残りの約4%分(10.8 兆円程度)は社会保障の安定化のための財源」[6]とされ、全額社会保障に使われる。一方で公共事業での活用や地方税化など、様々な用途に関する主張も存在する。
また、一体改革で社会保障制度も持続可能な形を目指すとされるが、社会保障改革の議論では十分な進展が見られず、消費税増税による負担が先行するのではないかと懸念されている。
日本は消費税を導入したのが先進国の中では極めて遅いがその歴史を振り返ってみる[7]。
最初に登場するのは、戦後直後は取引高税という形で取引高の1%に課税がなされていたが、反発も強く14か月で廃止された。
次に話題に上るのは1970年代で、均衡予算が65年に崩れ、財政赤字が徐々に増え始めた中で主張されるようになる。政府税調において77年に初めてその必要性が提案され、79年に大平内閣が導入を画策し、選挙でも必要性を訴えるが、歳出の無駄非効率の見直しを徹底すること、不公平税制の是正による税収増を優先すること、という現代にも通じる二点を中心に反対意見が広がり、選挙期間中に導入断念を表明した。その後、土光臨調下での「増税なき財政再建路線」が支持を集め、消費税の議論は下火となるが、中曽根政権時に再び税制の歪みの是正を目指す抜本改革が志向される中で売上税という名称で取り上げられることになる。ただし、この時も反発が強かったため、対象からの除外が大規模に設定されたため課税ベースの広さという意義が薄れ、さらに社会党の「ダメなものはダメ」という主張に支持が集まり参院選でも大きく議席を伸ばすなどの大きな傷を自民党に残し、結局、廃案となった。
しかし、個別消費税に頼った体制の歪みの是正と財源確保の必要性から導入は引き続き検討され、竹下政権下で公明党、民社党の賛成を得て、多くの減税と組み合わせて合計では減税が上回る規模にした上で、3%の消費税が導入されるにいたる。ただし、この時も各紙の世論調査で反対が大きく上回る状況下での成立だった。またこの際は導入の影響として物価の上昇は前年度を2%程度上回ったが、景気が良かったこともあり、さほど経済に悪影響を及ぼさず、順調に消費も伸びていた[8]。
この後、94年になって、細川内閣での7%の消費税に相当する国民福祉税構想を出すも失敗し、退陣に向かう契機となった。一方でこの構想が税制改革の議論を再燃させ、自民党政権下となった94年に5%への増税案が与党税調でまとめられ、成立に繋がった。この際も減税と一体で導入が決定され、かつ、減税が先に実施された結果、増税直前になって凍結論が噴出したものの結局橋本政権下で実施された。97春に導入されたが、直前の減税措置の打ち切りと合わせて7兆円規模の増税になったことから消費の落ち込みに繋がり、さらには秋には山一證券の倒産やアジアの経済危機と重なったことで景気状況は大きく悪化した。この結果、どこまで消費税増税の影響とみるかは難しいが消費税増税が景気を冷え込ませるという認識を植え付けた。
このように消費税増税は課税の公平性の高さや大規模な財源となることから30年近くにわたってその導入、拡大が繰り返し画策されてきた。一方で、その過程は常に強い反発を引き起こし波乱含みのものとなった。日本の消費税増税に対する反発の強さは海外と比較しても顕著であるという[10]。
また、各国の消費税(付加価値税)水準を見ると、右の表のようになっており、日本の現在の5%という水準は極めて低い部類に属する。なお、アメリカは州、自治体ごとに異なるがニューヨーク市で8.875%となっている。ただし、上位国は高福祉の国も多く、税率だけの比較ではなく、負担とサービスのバランスで税水準も考える必要はある。また、イギリスやオーストラリアでは食料品は非課税となっているなど、逆進性への対応がなされている国も多い。
三党合意で増税を進める自民党、民主党、公明党の三党は経済状況を見て判断するとはされるが消費税増税を基本路線としている。低所得者対策としては自民党、公明党は軽減税率を、民主党は給付付き税額控除を主張するなどの差異もある。
日本維新の会も消費税自体には反対という立場は示していないが、地方税化することを主張している。
みんなの党は消費税増税の前に議員や官僚が身を切る改革を行うべきだと主張し、増税凍結も主張する[11]など反対に近い立場をとっている。生活の党も経済への影響から増税凍結を主張する。
共産党、社民党は消費税増税ではなく、高所得者への増税などによる財源確保を主張する。