政治献金は全体的に緩やかな減少傾向にある。平成23年の献金は、前年度と比べ個人による献金は約15%、政治団体による寄付は約25%、企業による企業献金に至っては50%近く減っている。[i]
政治献金は「政治資金規正法」という法律によって制限されている。上記の表の様に、献金は大きく個人による献金と、企業による献金に分けられる。個人が献金を行なう場合、献金額の上限を除けば、政治団体などを通じて個々の政治家、政党などに献金できる。一方企業の献金は厳しく制限されており、政治家個人への献金が禁止されている。しかし、実際は政党などに献金を行いその資金を個人の政治家に送る事ができる。更に、企業が独自に作った偽装団体を通じて献金を行なうなど、様々な「迂回献金」が問題になっている[iii]。最近の例では、日本歯科医師連盟による一連の献金が迂回献金であったと言われている。
民主党の前原議員が在日外国人から献金を受けていた事を認め、責任を取る形で外務大臣を辞任した。しかし去年10月、自民党の石破茂幹事長も外国人から献金を受けていた事が発覚した。個人献金は企業献金と異なり明るみに出にくい為、今後いかに外国人による献金を防ぐかが課題になってくる。
政治活動には莫大な資金を必要とする。例えば自民党は、人件費、光熱水費、事務所費など経常経費、組織活動、選挙活動、機関誌発行などの政治活動費、調査研究費など様々な費用を計上し、その額は約123億円である(平成23年度)[iv]。この膨大な費用を賄う手段は、主に2つある。一つは国家から与えられる政党交付金であり、もう一つが政治献金である。政党交付金は国民一人当たり250円を計上し、これを国会の議員数、衆議院、参議院選挙それぞれの得票数などを基に各政党に配分するシステムであり、約320億円を全政党で分け合う形になる[v]。しかしこれではおよそ足りない為、政党は民間からの寄付金を募って不足分を賄っている。この様に政治献金は政党の政治活動を支える重要な収入源となっている。
しかし一方で、献金を受けた政治家・政党が献金の見返りとして政策を献金した者に有利になるように「歪める」可能性も指摘されている。特に企業の場合、多額の寄付を行なう事が可能な為、その献金活動は厳しく制限されている。企業の献金対象は政党・政治団体に限定されている他、額も企業の資本金や組合員数に基づいて750万~1億円までの上限が設けられている。
これは杞憂ではない。アンケート結果によれば、献金を行っている企業の約13%は、献金する理由について「自社や業界団体の利益に資するため」と答えており[vi]、少なくとも一部の企業や業界団体がある種の利益誘導を期待して献金を行っている事がわかっている[vii]。献金をしていた企業が、公共事業の受注を受けているという指摘もある[viii]。
献金が際限なく行われている国家もある。アメリカでは2010年の”Citizens United判決”で、企業が献金を行なう事は企業の「表現の自由」であり、これに制限を設けるのは憲法違反とされた。これにより企業も上限なしに献金をする事が出来る[ix]。しかしこの代償としてアメリカでは立法過程で議員が一部の利益団体に有利になるような交渉を行っている。一例として、リーマン・ショック後の金融証券取引に関する法案の強化などが、投資銀行による献金で効果が薄められてしまったと指摘されている。[x]
政治活動において資金は重要であり、資金がある事によって幅広い活動が出来ることになるのは事実である。しかしそれと同時に、特定の意見により政策決定過程が歪められてしまう可能性も忘れてはならない。
共産党は、民意を歪めるという理由から、政治献金の廃止と、政党助成金の廃止両方を訴えている。社民党と民主党は企業による献金の廃止を政権公約として掲げている。
企業献金については何も言及していないが、自民党はこれから党の方針として献金者の国籍を聞き、通称名の外国人による献金を阻止していく方針。公明党は額についての規制強化に取り組んできた他、透明性を高めるため明細の表示を法制化した。日本維新の会は公約として政治献金禁止を掲げていたが、太陽の党と合流した際に、公約から取り下げており、現在は上限を設けるだけにしている。