2012年に打ち上げられた「銀河3号」は人工衛星「光明星3号2号機」の軌道投入に成功した[1]。銀河3号は大陸間弾道ミサイル「テポドン2」の改良型と見られており、これにより北朝鮮はアメリカ本土を射程とする弾道ミサイルの打上能力があることを示したといえる[2]。弾道ミサイルは命中率が悪くペイロードも小さいためそれ自体が直ちに脅威になるわけではないが、核兵器が搭載されれば迎撃が困難な戦略兵器となる。
北朝鮮が弾道ミサイルの開発に注力しているのは、それが迎撃困難でありかつ遠く離れた敵国の領土を直接攻撃できる兵器であるため、瀬戸際外交において有効なカードとして機能するからである。北朝鮮の瀬戸際外交の目的は自国の存続を周辺国に認めさせることと経済援助を引き出すことだと見られている[3]が、近年北朝鮮の行動はエスカレートしており対話自体が困難となっている。
日本が北朝鮮の弾道ミサイルを脅威と認識することにあったきっかけは1998年のテポドン1の発射である。日本の上空を北朝鮮のミサイルが通過する、という事態は少なからずショッキングな出来事であったが、北朝鮮はノドンと言われる日本全土を射程に入れた準中距離弾道ミサイル(射程1500~2000km)をすでに保有しており、ノドンの長射程改良型であるテポドンは日本を目標として開発されていない。テポドンはアメリカ本土を目標としており、アメリカに対して瀬戸際外交を実施しようという姿勢を示している。
日本政府は「拉致問題の解決無くして日朝国交正常化なし」との立場をとっており、北朝鮮の拉致が核ミサイルと並んで重要なテーマとなっている。2002年の小泉首相訪中時に北朝鮮は拉致を正式に認め、拉致被害者とその家族の日本帰国が実現したもののその後は進展が見られない。近年北朝鮮は対外強硬姿勢を取っていることから、そもそも両国間で対話が行える状況にないのが実情である。
2002年に当時の小泉首相は北朝鮮を訪問し金正日総書記と会談、日朝平壌宣言を発表した。この日朝首脳会談は日本の対北朝鮮関係を大きく進展させるものであったが、それから10年以上経過した現在両国の関係に進展は見られない。日朝平壌宣言は将来の日朝国交正常化へ向け協議を行うとしており、それにあたり問題として1.北東アジア地域の平和と安定(具体的には北朝鮮の開発している核兵器とミサイル) 2.歴史認識3.拉致問題 を挙げている[4]。ここでは北朝鮮特有の問題である核ミサイルと拉致の問題について見てみよう。
現在の日本の安全保障における最大の懸念事項が北朝鮮の核とミサイル問題である。1998年のテポドン発射、いわゆる「テポドン・ショック」は弾道ミサイルの脅威を日本が認識するきっかけとなり、日米相互協力による「弾道ミサイル防衛(BMD)」という概念が導入されることとなった。弾道ミサイル防衛は以来最優先で取り組まれるべき課題となり、迎撃ミサイルの開発・配備などのハード面だけでなく情報収集衛星の配備から有事法制の整備、集団的自衛権問題など様々な要素がその達成に向け動いている。
経済面では2006年のミサイル発射と核実験に対し国連安全保障理事会が安保理決議1718を採択、北朝鮮に対する経済制裁が実行された。日本政府もこれに呼応する形で特定船舶入港禁止法と改正外為法を利用した独自の経済制裁を行い、北朝鮮に対して圧力を加えている。
日本や周辺諸国は北朝鮮に対し「対話と圧力」を外交の基本方針としており、上記の措置は「圧力」を目的としている。しかしながら「対話」の方はなかなか進展が見られない。北朝鮮の核とミサイルの問題は東アジアの周辺諸国にとっても重大な問題であることから、2003年より日本・アメリカ・韓国・北朝鮮・中国・ロシアの六カ国による会合、いわゆる六カ国協議が行われてきた。しかし北朝鮮は2009年に離脱を表明、実際2007年を最後に六カ国協議は開催されておらず現在この枠組みはほぼ機能していない。
周辺国共通の問題である核ミサイルの問題と異なり、拉致問題は各国が個別に解決を図っている問題である。2002年の日朝首脳会談で北朝鮮は日本人の拉致を公式に認めた。しかし日朝両国が認定した拉致被害者の数字には隔たりがあり(日本側は17人、北朝鮮側は13人)、さらに北朝鮮側は日本に帰国した5人以外は死亡したとしていることから日本側は再調査を求めている[5]。しかし北朝鮮の外交は軍事的にはアメリカ、政治経済支援の面では中国を重視しており、かつ近年軍事的な強行措置を強めていることから、北朝鮮が日本の拉致問題に対してどこまで積極的な対応をみせるかは不明確である。
すべての党が北朝鮮の核・ミサイル開発に反対しており、拉致問題についても北朝鮮の姿勢を批判し解決を求めている。また北朝鮮に対する経済制裁措置にも全政党が容認している。