尖閣諸島は日本の国土の一部として重要である事は間違いない。しかしより重要なのは尖閣諸島周辺の海である。尖閣諸島を保有する事により、周辺の海域も日本のものとなる。この海域には天然資源が豊富に埋まっているという試算があり、石油・天然ガスが約22兆円埋まっているとされている他、レアメタルなどの金属も海底に眠っていると言われている。
また、資源だけでなく、貿易の為にも海は重要である。尖閣諸島付近は日本を行き来する船の通り道(シーレーン)がある為、この付近の安全を確保することは日本経済にとっても大変重要である。
2012年、東京都の石原都知事が尖閣を買うと宣言し、尖閣諸島の所有者と交渉を始めた。購入資金の為に寄せられた寄付金は14億円にもなり、購入の手続きが本格化した。しかし事態の沈静化を計った日本政府が国有化に向けた動きを開始、最終的に20億5000万円で国が購入を決定した。
国有化する前から尖閣諸島付近に中国の調査船が入る事はあったが、国有化後、そのペースは格段に増えている。現在は約3日に一回のペースで「領海侵犯」(この語の詳細については、「詳しく知りたい人に」を参照)が行われている。挑発の量だけでなく、「質」も過激化している。2月には日本の船に火器管制レーダー(ミサイルの照準を合わせる為の機器)が照射される事件も起き、事態は収集が付かなくなりつつある。
尖閣諸島問題に関して、クリントン国務長官は「尖閣諸島の最終的な領有権について米国は特定の立場を取らないが、日本の施政下にあると認識している…日本の施設権を損なうための一方的な行動はいかなるものにも反対する。われわれは全ての関係国に対し衝突を回避し、見解の相違には平和的な手段で対応するよう求める」と述べた。また、米国議会は尖閣諸島を日米安全保障条約の保護対象にする事を可決しており、米国は尖閣諸島が日本のものであるとの立場を貫いている。しかし米国は領土問題に直接介入する事はなく、問題解決は日本が単独で努力しなければならない。
尖閣諸島は沖縄の西南西に位置しており、沖縄県の一部となっている。魚釣島、久場島、大正島、北小島、南小島などから成る。中国では魚釣(Diaoyu)島と呼ばれている。豊富に存在するとされている天然資源の所有権に直結するため、その領有権が争われている。尚日本政府の公式見解は、尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない事になっている。
日本の領有権の根拠としては、1895年1月に尖閣諸島を日本国領土とする閣議決定をし、沖縄県に編入したことが挙げられる。第二次世界大戦後には米国の沖縄施政下に置かれ、その後1971年の沖縄返還の際に返還対象区域として、再び沖縄県の一部となった。
一方中国は、尖閣諸島は1895年4月の下関条約(不平等条約)で日本に割譲されたものであり、明王朝時代から中国が領有していたとする。第二次世界大戦で日本が敗戦した際に台湾の領有権を放棄したが、その放棄した領土の中に尖閣諸島が含まれている、それ以降台湾の一部として中国の統治下に置かれている、と主張する。
これらの主張が噛み合わず、中国による挑発行為が続き、メディアでは「領海侵犯」という言葉をよく耳にする。しかし厳密には「領海侵犯」という言葉は存在しない。国際法上領海は自由な往来が認められているからである。ただしこの自由な往来は領海を有する国家に対して「無害」である事が条件であり、中国による領海侵入が「無害」であるかについては疑問の余地がある。
一方で領空侵犯は明確に国際法違反である。このため、中国のヘリコプターが領空を侵犯した際、日本政府は通常より強い抗議をしている。
残念ながら尖閣諸島の問題は今後も続きそうである。これは中国が領土問題を一切国際司法裁判所などの国際機関に訴えないという立場を取り続けているからである。さらに中国は近年海軍増強に力を入れており、今後も挑発行為は続くと考えられる。
一方日本は元来の「領土問題は存在しない」という立場を取り続けている為、交渉がより困難になっていることも事実であろう。双方から有効な解決の糸口が見えない以上、現在の状態が継続する事はやむを得ないと考えられる。
尖閣諸島の有人化や、ICJ提訴を促すなど実効支配を強化すると共に中国の挑発に硬い処置で応じる構えを見せるグループ。
尖閣諸島を日本の領土だとしつつも、両国の国内ナショナリズムのエスカレートを懸念し、対話などを通じて穏やかな解決を望む政党のグループ。
領土問題の存在を政府として認め、その後外交努力により解決を目指す。